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センター試験を控えたクリスマスの日に、雪ではなく雨が降っていた。
斯波家のおばーちゃんは年明けに入院することが決まっていて、もしかしたらもうあの家に帰ってくることはないのかも知れない、という話が我が家のリビングにも流れてきた。
うちの家族にそういう話を深刻そうに伝えるおかーさんは、いったいなにを考えているのだろうと顔をじっと見てしまう。
斯波家のおばーちゃんは、うちのおかーさんがこっそりつき合っている男性のおかーさんなわけで。
不倫の仲だとしても姑や義母、みたいな感覚ってあるんだろうか。がんばって想像してみたけど、わからなかった。
ふと乙音を見ると、「あの家に帰ってくることはないのかも」という言葉の意味をしっかり理解できているようで、涙ぐんだりなんかしていた。
アタシはなんとも思っていないが、斯波家に足しげく通っていた乙音は違うのかも知れない。
うちはおじーちゃんもおばーちゃんも北陸にいるからなかなか会えないし、乙音が自分のおばーちゃんのように感じていてもふつうのことのような気がした。
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