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「だからね、乙音。あちらのおばあちゃんがとても会いたがってるそうなの。今夜訪ねてみる?」
何食わぬ顔で、おかーさんはおとーさんにコーヒーを淹れながらご近所との仲が円満であることをアピールした。
ねえ。それ、智のおかーさんとおばーちゃんからされた話なんでしょ?
もう一度おかーさんがどんな気持ちなのか想像しようとしたが、ぐちゃぐちゃといろんな境界線が混み入って、やっぱりうまく考えることができなかった。
「わたし、会いたい! 斯波のおばあちゃん、大好き」
素直な乙音は、おかーさんの話に前のめりになった。おとーさんは「迷惑にならないように行儀よくしろよ」とそれっぽいことを言っている。
アタシひとり、おなかの中がねじ切れるような違和感を覚えていることに寂しさを感じた。
だけどこれ、口に出しちゃだめなやーつ。心の中だけでそう茶化してはみるが、まだ納得はできていない。
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