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おそらく、卒業式には別れることになるのだろう。恋愛の体をなしているはずなのに、アタシの中ではもはや予定調和でしかなかった。
おかーさんは、キッチンでなにか読んでいるようだった。なんとなく気になって振り返ってみると、アタシの視線を感じておかーさんは顔を上げる。
「なに?」
「ううん。なに読んでるの」
「乙音の本棚にあったやつ」
「少女小説? 興味あったっけ」
「べつに。ただ、思春期のムスメが読むのにふさわしいのかなーって。大人な展開があったらどうしようと思って」
おかーさんは、乙音の本のカバーをアタシに見せる。見たことがある。胡桃花音の本だ。
「ふーん? アタシの読んでるものもそんなチェックしてたっけ」
「あなたは智くんと少年漫画ばかりシェアしてたからね。少年漫画ならだいたいだいじょうぶよ」
「……なる、ほど」
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