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斯波家のおばーちゃんは、智の高校卒業を待たずにこの世を去った。
人生ではじめてのお葬式だとしか思わなかったが、乙音はそんなことなど関係ないというようにはらはらと泣いた。
智はそんな乙音を、なんとも言えない顔をして見つめていた。智の目も、少しだけ赤く腫れていた。
しんみりとした空気をよそに、アタシは不謹慎なことを考えていた。
智は大人になった乙音と結婚でもすればいいのに、と。
だって、ふたりの空気はこんなに似ている。他人であることが不自然なほど。
もしかしたら、智と乙音は家族になるために近くに生まれてきたのかも知れないと、運命のようなものをアタシは感じていた。
自分のそういうのって、これっぽっちも感じないくせに。
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