やさしくなりたい

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   正直、幸せって言葉の意味をアタシはまだ知らない。  嬉しいとか楽しいはそこらへんに散らばっているが、そんなの一瞬の話だ。散らばっているぶん、心に留まるような出来事なんてそうそうありはしない。 「窓をあけっぱなしにできるくらいのいいお天気で、風がいいにおいを部屋に運んでくれて。どこかで鳥さんがごきげんで歌ってる。ふわふわいい気分で、うたた寝しちゃいそう」 「……我が妹ながら詩人か、オマエは」 「わかんないけど……お姉ちゃんってあまりそういうの興味ないよね」 「風なんて毎日どこかで吹いてるもんでしょ」 「そんなことないよ。毎日吹いてはいるけど、温度も強さもにおいも、いつもちがうよ」  この頃になると、さすがにアタシと妹の違いは外見のことだけではないとわかってくる。  アタシは乙音のことが大好きだが、種類の違いを見せつけられるこの感じはどうにも気持ちが悪かった。 .
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