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妹への違和感にも慣れてしまい、もうほとんどそんなものさえ感じなくなっていたころ、アタシは高校2年生になっていた。
春の終わり、智とアタシの間でひっそりと大事件が起きた。
クラスメイトとコーヒーショップの新作ドリンクを飲みに行き、そのまま話し込んで帰りが遅くなった。
街灯がぽつぽつと点在するだけの薄暗い道を歩いていると、うちの外構フェンスに智が体を預けて立っているのが見えた。
なにをしているのかと思えば、乙音が庭に出ていた。
乙音はおかーさんの育てている大きな白い百合の花を示し、にこにこしながら智と話している。
智は無表情だったが、おとなしく乙音の話を聞いているところを見れば、楽しくないわけではないことは傍目にもわかる。
乙音はまだ12歳になったばかりだけど、このふたりは10年もすればいい感じになるんじゃないか、と無責任に思った。それくらい絵的にしっくりきたのだ。
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