二十四分間の恋 1

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二十四分間の恋 1

彼女は、恋をしている。長身で、スタイルのよい彼に。 毎日、恋をしている。時の進みとともに、彼をより好きになっている。 彼女の名前は、1。紛れもない、数字の1である。 彼女の居場所は、時計の文字盤にある。 1として時刻を表し続け、壁掛け時計の文字盤上で日々休むことなく働いている。真面目な性格なのである。 そんな彼女の恋する相手というのが、長身の彼。 背が高く、スタイルのよい、スマートな人。 毎時間を忙しく回り続けている、彼女にとって身近な存在。 ーー長針、その人なのだった。 (…………) 時間の経過とともに、長針はゆっくりと位置を変えていく。 その姿を、恋する1は熱のこもった瞳で見つめている。 長針は一日のうちに二十四回、回転し、次の日もそのまた次の日も、同じように回り続ける。 つまりは文字盤の特定の数字に重なるのも一日に二十四回ということになり、一時間に一分、長針は数字の上に留まる。その触れ合いが、1にとっては幸せな時間に他ならなかった。大好きな彼が目の前に現れる瞬間、1の胸は破裂しそうなほどに高まりを見せるのだった。 1も、相当に実直で働き者だった。 しかし、長針も負けず劣らず、いや、1からすれば自分以上に勤勉な人で、その姿勢が1には好ましく映った。彼の、とても好きな一面だった。 なにせ毎日毎日寸暇もなく働き、休みといえば、時計の電池が切れた時だけ。 それでも文句も言わずにコチコチと時間を示し、丸い壁掛け時計の縁をギリギリに回る日々を過ごしている。それを誠実に繰り返している。 長身でスマートで、なおかつ仕事熱心な彼。 そんな彼に、1が恋心を抱いたのもなかば自然なことだった。長針が近づいてくるまでの時間は長く、反対に長針と触れ合っている時間はとても短く感じられた。一時間のうちの一分間だけが、1にとって意味のある時間で、一日のうちの二十四分間に、その日の幸福がギュッとつまっているようだった。 (……もし、もしだけど)ふとした瞬間に、1は想像する。 (彼も私のことが好きだったら、両思いだったら、……どうしよう) 長針と自分が恋仲になる。そんな未来を考えただけで、顔は熱くなった。胸はトカトカと鼓動した。 一日に二十四分しか会えない関係だけれど、恋人同士になれば、その二十四分間は今まで以上に素敵な時間になる。そのはずだった。 恋は、毎日を素晴らしく輝かせる。1はそれを実感していた。1にとって長針は、心から大切な存在となっていたのだった。
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