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僕は急いでいた。
あと5分で、最終電車が発車してしまう。僕の家は遠い。だから、これを逃すと家に帰れなくなってしまう。全力で走ればぎりぎり間に合うかもしれない。
だけど、もう10分近く走っている。いつも、運動なんてしてないから、ちょっと走っただけで、脈が上がり、息は乱れ、足はもたついて、身体が悲鳴をあげる。
今からダッシュすれば、1分くらい余裕ができるかもしれない。だけど、身体がいうことをきかない。あそこに見えるコンビニの角を曲がれば、駅の改札がある。だけど、まだ1kmもある。
頼む! 身体よ、動いてくれ!!
遅々として進まない足を前へ前へと動かしながら、やっとの思いで角を曲がると、思わぬ障害が目の前に現れた。
しまった! 改札の前に、踏み切りがあったんだ!
開かずの遮断機という訳ではないが、ここでのロスは命取りだ。あとはもう、僕の足が最後のダッシュまで持つかどうかにかかっている。
秒単位の争いに、今日の行く末をかけた。
あと30秒。
電車が通り過ぎ、遮断機が上がる。と同時に最後の力を振り絞って、足を交互に動かしていく。
あと20秒。
こんな時に限って、乗車カードが出てこない。
あと10秒。
改札の前まで来た。バックの底にへばりついていたカードを何とか取り出し、改札を抜けた。
あと5秒。
扉が閉まるまであと3秒、2秒、1秒。
電車の床に足を置いた。
プシュー……
ギリギリ間に合った。
安心感が私を覆うと、そのまま眠りについた。
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