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深冬の両親が中々子どもに恵まれなかったのも、生まれたのが望んでいた男児じゃなかったのも、深冬のせいじゃない。
しかし田舎の閉鎖社会は度しがたい。姑は深冬の母親を詰り、詰られる母親は深冬を恨んだ。自分の腹から生まれてきたことをひたすら責め立て、結局、最後は僕たちが小学校に上がる前に病気でこの世を去った。父親が外でつくった女が男児を身籠ったことに絶望したからだと、周囲はお悔やみを言うふりをして囁き合った。
母親が死んだのだって、深冬のせいなわけがない。それなのに、誰もがみんな、深冬に因果を押しつける。
あの子が生まれて、あの家は不幸になった。口々に言う。
馬鹿げた話だ。けれど、深冬の子ども離れした美しさが畏怖と噂に拍車をかけた。人の不幸と引き換えに美しく生まれてきたと。
冗談じゃない、と蹴り倒したくなる。実際、何度か同級生を蹴飛ばしたし、深冬に暴言を吐いた郵便局のオッサンには頭突きした。
必要のない不幸せを背負わされているのは、深冬のほうだ。
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