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蝉が命を燃やす八月。蛙の鳴き声。いくら熱帯夜が続いても、僕たちにはどこか木枯らしが吹いている。また来年、と背を向けた瞬間、深い冬に覆われる。繋いだ手は離れて、次の夏まで舫うことはない。線香のにおいが溢れる季節まで。
またね、と僕たちの夏に別れを告げた深冬と僕は、その日から再び八月を待つ日々を、空っぽの手のひらで暮らすはずだった。
けれど、一年を経ずに再度顔を合わせることになった。
黒と白の縦縞幕が張られた、葬式で。
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