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夏が来る前に、深冬の父親が死んだ。僕の父親と一緒に。
深冬は喪服となった制服で、うちへ来た。菊の花の色も鈍くなった夜、息を切らせて、ローファーは片方なかった。ぐちゃぐちゃになった髪。頬は腫れ、瞼と唇は切れて血が滲んでいた。僕と母が驚いて駆け寄ると、深冬は玄関に入りすらせず、その場に崩れ落ちた。
崩れ落ちたまま、頭を地面につけた。
ごめんなさい、と悲鳴を抱いた嗚咽が響いた。母と僕の足もとで、あの小さく細い手を丸めて、消えてしまいそうなくらい、ふるえていた。
ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい。
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