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「やーん、ふーちゃんまた更に可愛くなったね! ね、ね、凉哉!」
「うるっさ」
「あんたたまらないでしょ! わかるわあ、ここ毎日おんぼろ橋通いつめてたんだから会えてひとしおでしょ」
「マジで煩いから」
僕の返事など何のその、母は深冬の好きな献立を上機嫌で告げる。
「今日はね、シチューだよ! もちろんイカフライもね。たくさん作るからね、いっぱい食べてね」
「ありがとう、嬉しい。手伝ってもいい? 作るの、一緒に……」
「はい可愛い、可愛さの塊だわ。どうしたらこんないいこで可愛い子が生まれてくるの? 奇跡だわ……」
恐らく母よりも深冬のほうがずっと落ち着きがある。でも、時代遅れのくだらない噂や周りの同調圧力をもろともせず、いつでも深冬を可愛い可愛いと大歓迎する母の姿を前にすると、僕は、この人の息子であることを誇らしいと、こっそり思う。言ったことはないけど。
「着替えておいで、葡萄食べよ」
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