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そんな事を考えながら歩いていると、母校の小学校の前にたどり着いた。
「うわ、全然改装してない…」
円は思わず呟く。
それほどに母校は20年前から少しも変わっていなかった。
校庭のあの長すぎる登り棒を登りきった人は勇者だったな、ここのフェンスの穴は高田くんがプロレスごっこでぶつかって空いたんだった。
ぽつりぽつりと他愛も無い思い出が蘇る。その時、
「や〜い!短足、豚足、鈍足ま〜どか!」
そう聞こえ、思わずバッと振り返るとそこにいたのは右目の下に絆創膏を貼ったノースリーブに短パンの少年だった。
「…星野くん?」
円は呟いた。目を擦ってよく見ると、そこにもうその少年はいなかった。
星野…星野拓也。本当に久々に思い出した。彼は、、意地悪なやつだった。
「馬鹿円〜こんなのもわかんないのかよ」
拓也はニヤニヤと笑いながら円が算数のテストで間違えた所を指差す。
「何よ、拓也もそんなに点数変わんないじゃない」
「ばっか、10点も違うぞ!お前は76点で俺は84点だ」
「10点は嘘よ!8点じゃない!」
ぎゃあぎゃあと言い合う2人の間に、まぁまぁと割って入るのはいつもキョンちゃんだった。そして必ずと言って良いほど、
「拓也、あんまり円ちゃんを困らせるなよ」
と聡が助けてくれるのだった。「けっ格好づけやがって」と唇を尖らせた拓也と違い、聡は周りのどんな男の子より大人っぽかった。
頭が良く、優しくて学級委員を任せられるほどリーダーシップがあるイケメンだった彼はいつも女の子の憧れの的。
本人は女の子はあまり得意じゃない様子だったが、男勝りな円と優しいキョンちゃんとはよく一緒に過ごしていた。
こんな完璧イケメンが側にいるというのに我ながらおかしな話だが、当時の私は拓也のことが好きだった。
キョンちゃんと聡には話していなかったが、何となく気がついていただろう。そういえばキョンちゃんに至っては、話していないのに「拓也に告白したりはしないの?」と当たり前のようにに茶化してきた気がする。
幼馴染みの勘というべきか、私がわかりやすいのか。
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