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ふと小学校の帰り道よく前を通った家を見つけた。この家で飼っていたシェパードはいつも吠えてきて、幼かった円とキョンちゃんは怯えて、ここの前は必ずダッシュで通り過ぎたものだった。
大人になったのだからもう怖くは無いだろう、と思い少しフェンスを覗く。しかしそこにシェパードの姿はなかった。
代わりにいた家の中からこちらに向かってキャンキャンと吠えるポメラニアンを見て気がついた。
最後に自分があのシェパードを見てからもう20年近く経っているのだ。そして見るからにまだ若い新しい犬。きっともう世代交代の時が来てしまったのだろう。
変わらないように見えた景色が、なんだか急に全く知らない場所のように見えた。
円は小さくヒラヒラッとそのポメラニアンに手を振ると、足早に過ぎ去った。キャンキャンッという鳴き声が遠ざかっていったかと思うと、急にバウバウッ!という低い鳴き声が近くで聞こえた。
思わず振り返ると、そこには大型犬…それも20年前円が恐れていたシェパードそっくりの犬がいた。
「えっ!」
驚き一歩後退りする。シェパードはじりじりと円に寄ってくる。そしてバッと円に向かって飛びついてきた。
「うわぁ!?」
円は思わずバッと両手で顔を覆う。しかし何もぶつかってくる気配はない。覆っていた手を退けると、そこにはもうシェパードの姿はなかった。
なんだったんだ。星野くんといい、シェパードといい。それも両方昔の姿のままなんて。2回も観たのだ。見間違いとは思えない。
疲れてるのかな、と思い円は小走りで家へ向かうことにした。
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