居酒屋まるの院長先生ご乱心

104/108
前へ
/111ページ
次へ
少なくともアマビエはアマビエなりに、この病気の流行を憂いてくれているよう。 お地蔵さんとアマビエが出て行った後、俺ははっと気付いた。 お地蔵さんの分はいつもお供えだと思っていて代金を請求していなかったけれど、アマビエの分払ってもらってない。 ああ、でも、まりちゃんの絵のモデルになってもらって、俺も恩恵を受けるみたいだから、いいのかな。 そう思っていると、華原さんがおもむろに一万円札を出してきた。 「はい、泉実ちゃん。これ、ワイン1杯とあの妖怪分の代金。」 「え、いや、こんなにいただくわけには。」 それに、アマビエの分まで華原さんが出すなんて、どういう心境だ? 「ここで借りを作りたくないのよ。ね、お願い。受け取って。」 そう言って俺の手に札を捻じ込むと、マンションで一休みしたらまた病院でバリバリ働くわ!と非常に頼もしい言葉を残して、まりちゃんの絵を手に去って行った。 「なんだかんだ言っても、地蔵が自分のために店に来てくれて、あの妖怪も連れてきてくれたことはわかっとるんじゃろ。素直になれんだけだ。もらっとけ、泉実。」 タカさんの言葉に俺は納得した。 顔を見るたびに喧嘩している華原さんとお地蔵さんだけど、意外といいコンビなのかもしれない。 お互い認めないだろうけれどな。 もしかして今夜いつも以上にお地蔵さんにつっかかっていたのは、照れ隠し? ようするに、ツンデレだったのか、華原さん!?
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4431人が本棚に入れています
本棚に追加