居酒屋まるの院長先生ご乱心

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「さて、アマビエがおまえんところで多少は役に立ったようだし、高天原代表としてそれを見届けたんで、わしも戻るか。」 カウンターに代金を置き、タカさんも立ち上がった。 アマビエが妖怪というだけでなく、神らしき名も持っているがために、わざわざ来てくれたタカさん、ありがとうございました。 こうして次々にお客さんたちが帰り、いつの間にかまりちゃんも消えて、店の中が急に静かになった。 「騒がしかったな。今夜は特に品のない客ばかりでおまえの心労が案じられる。」 そして、当然のことのように一人残っている吸血鬼。 「いえ、心労というほどのことは。」 よくあることなので、それほどは。 てか、普通の居酒屋ではありえないことなんだろうけれど。 「それでも、あの人間もどきの妖怪を連れてきた地蔵は、今回ばかりは感謝せねばな。」 「えっ。」 ミハイさんがお地蔵さんに感謝!? も、もしかして明日は雪が降るとか、大地震の前触れとかじゃなかろうな。 「妖怪には妖怪なりにそれぞれ異なる能力がある。あれの絵姿に力が宿るのも、そういうことなのだろう。しかも、小娘まで神気を込めたしな。私は案じていたのだ。この店の存続ではなく、私たち客のためにおまえがこの店を開け続けるということのリスクをな。私が飲むワインなど、本来であれば持ち込みでよかったのだ。おまえを外に出す機会を減らせるのであればな。」
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