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「泉実。こやつをつけあがらせることはないぞ。自分も儲けているくせに、私から大金を強奪するような凶悪犯だ。おまえの有り余る憐憫の情の一滴でも惜しいくらいだ。」
「人聞き悪いわね。私は公私を分けているのよ。あんたからいただいた寄付金は病院のもの。私の給料はそれとは別。生活費には、あんたのお金は1円たりとも使っていないんですからね。」
これを、出来る女性と呼んでいいものかどうか。
大人がぎゃあぎゃあ揉めている中、まりちゃんがぴょんとカウンター席から飛び降りて、小上がりにとっとっと走って行く。
その後ろ姿だけでワイン1本空けられるわあとうっとりする華原さんは、きっと女性の血液を摂取しすぎて元気になりすぎたんだと思う。
飲んだ分の半分でも自分の病院で献血してきたらどうだろう。
小上がりから戻ったまりちゃんの手には、クレヨンの箱とスケッチブックが抱えられていた。
「お絵かきしたら泉実にあげるね。まりちゃんの絵、泉実うれしい?」
「とっても。」
「だったらかくー!」
ああ、何ていい子に育ったんだ、まりちゃん。
思わずうるっときてしまいそうだ。
「おじちゃん、こっちきてー。」
まりちゃんに言われ、アマビエはカウンター席からテーブル席へ移動する。
テーブルの上にクレヨンを置き、スケッチブックを広げると、まりちゃんはアマビエの絵を描き始めた。
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