居酒屋まるの院長先生ご乱心

1/108
3054人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
都内某所。 駅にさほど近くなく、繁華街からも離れた一角。 大通りから外れた小さな小路を入ったところにぽつんと暖簾を出す店。 居酒屋まるーーそれが俺の店だ。 俺は烏丸泉実、この小さな居酒屋の店主である。 質屋を経営していた祖母から引き継いだこの土地と店、店の裏口と繋がっている平屋の住居。 サラリーマンを辞め、その質屋を改装して居酒屋を始めてから、もうだいぶ経つ。 立地ははっきり言ってよくない。 繁華街で一次会を終えた人の足は、駅の方に向かいがちだ。 たまにふらりと偶然訪れるお客さんもいるが、あまり常連にまでなってもらえない。 いや、常連ならいる。 非常にいる。 いるにはいる。 人じゃないが。 「泉実!今夜も一段と麗しいな!」 21時の開店、暖簾を掛けて店に戻り、カウンターの中に足を踏み入れた途端、溌剌(はつらつ)とした美声で来店した第一号。 オズワルド・ミハイさんーー吸血鬼。 しかも、東欧の名のある吸血鬼一族の次期族長候補らしいんだが、どうにもこうにも。 そして今夜も無駄な溌剌具合である。 元気溌剌な吸血鬼ってなんだ。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!