手作り雑貨ゆうつづ堂-白水晶の思い出-

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私、夏凪(なつなぎ)詩乃は、どうにも運が悪い。たぶん、幸運の女神から見放されている。  寝ている間に携帯の充電器は外してしまうし、ヘアゴムは切れるし、せっかく間に合う時間に駅に着いても電車が遅延して結果的に遅刻する。なにが恐ろしいって、これが日常茶飯事なことである。しかも、子供の頃から。きっと私は一生、この不運体質と付き合っていくのだろう。  改札の出口で配られていた遅延証明書をもらって、会社に向かってもうひとっ走りする。職場は、誰もが知っている大手雑貨メーカーである。それも、私がいちばん憧れていた商品開発部。この内定をもらったとき、私は初めて自分を幸運だと思ったものだった。  オフィスに滑り込んでタイムカードを押して、自分のデスクのある商品開発部の島へと駆けつける。 「すみません、遅くなりまし……」  しかし、島には誰もいない。呆然とする私に、隣の部署の課長が言った。 「夏凪さん、おはよう。開発部さん、朝から緊急会議で会議室に行ったよ。部長すっごくいらいらしてたなあ」  その間延びした声に、私の汗は走った汗から焦燥の汗に変わった。さらに重なる不運。まさかの突然の会議。部長の不機嫌。
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