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【side:如月隆之介】
よろめいたうり坊の腕を掴み、ちゃんと立ったのを確認してから手を離す。
「隆ちゃんじゃねぇよ。危ねぇな」
軽く前髪をかき上げながら溜息をつくと、目の前の相手が「ごめん、急いでたから」と小柄な身体を更に縮めて謝ってくる。
「まぁ、相手が俺で良かったな。他のやつじゃ確実にぶつかってお前ふっとんでただろうし」
「ふ、ふっとんでたって……っ」
「ないって言えねぇだろ」
当たり前みたいに言えば、彼女は言葉を詰まらせる。
相変わらず小さい。身長は150あるかどうかってところだろうか。昔から小柄な印象だったけれど、それは今でも変わっていないらしい。俺が190近くあるため、よけいにそう見えてしまうのかもしれない。
目の前で、僅かに頬を膨らませるようにして俺を見上げているのは、幼なじみの春川萌々。
幼なじみとはいえ、年齢差もあって四六時中一緒にいたような関係ではないが、それでも実家が近所であるため、それなりに顔を合わせてはいた。
小学校では一年しかかぶらなかったが、通学班も同じで、しかも俺が六年(で班長)のときに萌々が一年だったから、必然とその期間はわりと面倒を見る羽目になっていた覚えがある。
まぁ、要するに妹みたいな存在っていうか。それ以上でも以下でもない。
それは今となっても変わっていなかった。
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