14.まきまきの公園で

6/6
前へ
/137ページ
次へ
 それを目にした俺は小さく肩を揺らし、バイク(単車)――は使わず、徒歩で昔よく遊んだ近所の公園へと向かった。  ちなみにの公園というのは、文字通りのアレに似たすべり台があるからだ。昔からここらの子供はみんなその名で呼んでいる。それを特に訂正しようとせず、例えばソフトクリームの公園と誰も呼び直そうとしないあたり、やっぱり子供は子供なんだろうと今更ながらおかしくなる。  時刻は18時を回ったところ。  まばらに残っていた子供たちも、18時になったのを機に一斉に引き上げていったため、今は誰もいない。  俺は昔とは微妙に配置の変わっていたベンチに腰を下ろし、手持ち無沙汰にスマホの画面を眺めていた。  そこにピロンと一つメッセージが届く。キヨからだった。 〝今日、店に行くね〟  俺はそこに端的に返す。 〝OK〟  今夜の俺の出勤は21時から。そこから何もなければ閉店までいる予定だ。  普段の営業時間は18時から5時までで、店はまぁ一見普通のバーだが、深夜を回るほど少しだけ特殊な様相を見せたりもする。  あぁ、いや、普通のというと語弊があるのか? 何故って俺は仕事中必ず女装をしているから。他の店員はさまざまだ。……と言っても、残りは数人しかしねぇけどな。店自体がそんな広くねぇし。  ……で、その特殊な様相っていうのは……。 「(りゅう)ちゃん!」  俺がいつものように、確認がてら自分の働く店のSNSを覗こうとしていたら、 「ごめん、待たせちゃった?!」  息せき切ってという表現がぴったりなほど、はぁはぁと息を切らした萌々(もも)が、公園の敷地を踏むなりそう声をかけてきた。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

118人が本棚に入れています
本棚に追加