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それを目にした俺は小さく肩を揺らし、バイク――は使わず、徒歩で昔よく遊んだ近所の公園へと向かった。
ちなみにまきまきの公園というのは、文字通りまきまきのアレに似たすべり台があるからだ。昔からここらの子供はみんなその名で呼んでいる。それを特に訂正しようとせず、例えばソフトクリームの公園と誰も呼び直そうとしないあたり、やっぱり子供は子供なんだろうと今更ながらおかしくなる。
時刻は18時を回ったところ。
まばらに残っていた子供たちも、18時になったのを機に一斉に引き上げていったため、今は誰もいない。
俺は昔とは微妙に配置の変わっていたベンチに腰を下ろし、手持ち無沙汰にスマホの画面を眺めていた。
そこにピロンと一つメッセージが届く。キヨからだった。
〝今日、店に行くね〟
俺はそこに端的に返す。
〝OK〟
今夜の俺の出勤は21時から。そこから何もなければ閉店までいる予定だ。
普段の営業時間は18時から5時までで、店はまぁ一見普通のバーだが、深夜を回るほど少しだけ特殊な様相を見せたりもする。
あぁ、いや、普通のというと語弊があるのか? 何故って俺は仕事中必ず女装をしているから。他の店員はさまざまだ。……と言っても、残りは数人しかしねぇけどな。店自体がそんな広くねぇし。
……で、その特殊な様相っていうのは……。
「隆ちゃん!」
俺がいつものように、確認がてら自分の働く店のSNSを覗こうとしていたら、
「ごめん、待たせちゃった?!」
息せき切ってという表現がぴったりなほど、はぁはぁと息を切らした萌々が、公園の敷地を踏むなりそう声をかけてきた。
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