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チビのくせに、基本ぺたんこのスニーカーやローファー、ヒールのないバレェシューズを履きつけた私の足は、たまたま背伸びのためにあえて選んだウェッジソールのパンプスのせいで思うように走れなかった。
それでも待ち合わせの公園までは家からそんなに遠くなかったから。
私は時々転びそうになりながらも一生懸命走って目的地にたどり着いた。
「隆ちゃん!」
スマホを片手に佇む長身の幼なじみの姿を見たら、思わずそう叫ばずにはいられなくて――。
叫んだ後に人がいたら恥ずかしかったかもって思ったけれど幸い薄暗くなりつつある園内には隆ちゃんと私以外の人影はなくてホッとする。
一旦踏みとどまって、呼吸を整えてから彼の近くまで歩いて行って、おしとやかに「お待たせ」って声を掛けるんでもよかったんだけど……。
うまく走れなかった――最速で来られなかった――という負い目が私にそれを許さなかった。
公園の敷地に入るなり、はぁはぁと呼吸も荒いままに隆ちゃんに話し掛けて。
何かに追い立てられるように急いで幼なじみのそばに駆け寄ったら、転びそうになって支えられて。
隆ちゃんの厚い胸板と、大好きな香りにドキドキしていたら、当たり前だけど呆れられたように溜め息をつかれてしまった。
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