16.隆之介の秘密

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「……今8時前」 「あ、まだ1時間あるじゃん。じゃあ、もう一回はできるね」 「お前、今日普通に仕事だろ?」 「いいのいいの。全然大丈夫」  待っていたように背中に素肌を重ねられる。首に腕が回され、誘うように耳にふっと息を吹きかけられた。  俺はその手首をそっと掴み、ちらりと彼の顔を見る。 「……いや、風呂は」 「あ……じゃあ、お風呂で!」 「はぁ……?」  俺が呆れたような声を漏らしても、構わず「ほら、行こ!」とキヨはさっさとベッドを下りる。そのまま俺の腕を引っ張り、急かすようにして、 「(りゅう)ちゃん早いから大丈夫だよ」 「誰が早いんだよ」  俺が本気で拒絶しないのを知っているかのように、揶揄めかして楽しげに笑う。 (……まぁ、いいけど)  俺は仕方なく立ち上がり、キヨと共に浴室に向かう。  ……って、そんなふうに、簡単に流されてやる俺にも問題はあるんだろうけど。 ***  昨夜宿泊した場所は、キヨの希望で例のレストラン(アリア)の近くにあるラブホテル。  結局あれから微妙に盛り上がり、慌ててチェックアウトした頃には危うく時間(9時)を回るところだった。
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