02.如月隆之介

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「相変わらず綺麗に染めてるわね。今度私もやってもらおうかしら」 「よく言うわ」  銀髪で長髪。  朝まで飲んだくれてやってくる息子。  それを何でもないように受け入れて見える彼女は、これでも大手デパートのご令嬢だ。  現在はその父親(祖父)が経営のトップに立っていて、婿養子の父さんがその下で働いている。  そんな二人の間に生まれた子供は二人。  長男、次男。そして俺はその次男。  だから好きにさせて欲しいってんじゃないけど、昔から俺は家業に興味が持てなかった。  興味が持てないというか、できれば関わりたくなかった。  ちなみに長男(兄貴)はきわめて当たり前みたいに同じ会社に就職をした。 「それで、今日はどうしたの?」 「ん?」 「あ、わかった。ホームシック。季節の変わり目だものね」  ホールを抜けて、リビングに入る俺について歩きながら、彼女はぴっと人差し指を立てる。  ……なんだよそのどや顔。 「ちげーよ」  ばっさり切って返すと、あからさまに不満そうな顔をされる。 「服とりに寄っただけだよ」 「あぁ、そういえば私もそろそろ……と思っていたんだったわ。衣替え」  けれども、次には機嫌良さそうに手を打った彼女に、俺はほっとしたように息をついた。
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