118人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
「相変わらず綺麗に染めてるわね。今度私もやってもらおうかしら」
「よく言うわ」
銀髪で長髪。
朝まで飲んだくれてやってくる息子。
それを何でもないように受け入れて見える彼女は、これでも大手デパートのご令嬢だ。
現在はその父親が経営のトップに立っていて、婿養子の父さんがその下で働いている。
そんな二人の間に生まれた子供は二人。
長男、次男。そして俺はその次男。
だから好きにさせて欲しいってんじゃないけど、昔から俺は家業に興味が持てなかった。
興味が持てないというか、できれば関わりたくなかった。
ちなみに長男はきわめて当たり前みたいに同じ会社に就職をした。
「それで、今日はどうしたの?」
「ん?」
「あ、わかった。ホームシック。季節の変わり目だものね」
ホールを抜けて、リビングに入る俺について歩きながら、彼女はぴっと人差し指を立てる。
……なんだよそのどや顔。
「ちげーよ」
ばっさり切って返すと、あからさまに不満そうな顔をされる。
「服とりに寄っただけだよ」
「あぁ、そういえば私もそろそろ……と思っていたんだったわ。衣替え」
けれども、次には機嫌良さそうに手を打った彼女に、俺はほっとしたように息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!