118人が本棚に入れています
本棚に追加
動揺に戸惑う瞳で縋るように見上げた隆ちゃんが、平然と私を見つめ返してきて。
その、「なんでお前そんなに慌ててんの?」みたいな表情に、私は絶望的な気持ちになる。
それは結局、隆ちゃんにとっては男性と恋人同士のように振る舞うことは、全然後ろめたいことや隠さないといけないようなことじゃなくて……ある意味日常の一部なんだと気付かされるには十分だったから。
ましてやそれを何とも思っていないただの幼馴染みに過ぎない私相手に取り繕う必要なんてないんだと思い知らされて。
それと同時、隆ちゃんのそばに立つ彼の首元のあの赤いアザはキスマークに違いなくて、それを彼に付けたのは、他ならぬ隆ちゃんなんだ、って痛感させられる。
「ご、めんなさっ。私、急いでるんだった!」
それに気付いた瞬間、居た堪れない気持ちになって、私、一刻も早くここから立ち去りたいって思ってしまったの。
だって……そうしないと、良く分からない感情に押し流されて、今にも涙がこぼれ落ちてしまいそうなんだもの――!
最初のコメントを投稿しよう!