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……多分、みんなそれぞれ目当ての相手がその中にいるからだろう。
林田さんは僕。楓馬は林田さん(普段の接し方を見てれば分かる)。
僕は当然萌々ちゃん。そして萌々ちゃんは……僕。だと思っているんだけど、よく考えたらあれからその話をちゃんとする機会は得られていなかった。
「ねぇ、萌々ちゃん。林田さんから……話、聞いた?」
だからその日の帰り、僕は思いきって切り出してみることにした。
はっきり言って、萌々ちゃんは恋愛には疎そうな印象がある。
高校の時だって、彼氏ができたことはなかったはずだ。
まぁ、その頃の同級生は、どちらかと言うと林田さんみたいなタイプを好む傾向もあったしね。……僕は萌々ちゃん一筋だったけど。
「え……えっと」
「……聞いたんだ?」
駅へと続く歩道を並んで歩く先には、林田さんと楓馬の姿がある。
最近特に楓馬は林田さんに優しくて、林田さんもそれを厭っているようには見えなかった。
そのことにほっとしてしまう自分に少しばかりの罪悪感を抱きながら、それでもこのまま二人が上手くいいくよう応援したいと思う気持ちも嘘じゃなかった。
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