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「僕、ちゃんと話したから。好きな人がいるってところまで」
「うん……それは、聞いた……」
「名前ははっきり言ってないけど……でも、この4人の中にいるとは言ったから。まぁ言ったも同じだよね」
内容のわりに、どこか淡々とした会話を続けながら、僕は少しだけ俯きがちに歩く萌々ちゃんを横目に垣間見る。
その表情は、顔にかかる髪に隠れてよく見えない。もしかしたらまだしっかり切り替えられていないのかもしれない。
思ったものの、今日こそはという気でいた僕はそのまま続けようとした。
「だから、これからは――」
「ご、ごめん。それ、なんだけど……」
「ん?」
だけど、それを一旦萌々ちゃんに止められる。
そのどこか惑うような声に、思わず嫌な予感がよぎったけれど、
「えっちゃん……勘違いしてるかも」
「え?」
そう聞いたとたん、僕の思考は一瞬固まった。
思いがけず大きな声を上げてしまったけれど、幸い、前の二人には聞こえなかったようだ。向こうは向こうで話が弾んでいるらしい。
僕は内心ほっと息をつき、それから改めて萌々ちゃんを見た。今度は少し声を落として。
「どういうこと?」
「うん……それが……」
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