118人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっと……えっちゃんね。ゆ、柚弦くんの好きな人っ、楓馬くんだと思っちゃったみたいでっ」
ギュッと目をつぶって一息にそう言ったら、すぐそばで柚弦くんが息を飲む気配がした。
私は恐る恐る目を開けてそんな柚弦くんを見上げる。
途端なんの前触れもなく柚弦くんにギュッと手を握られて、驚いてしまった。
「あ、あのっ、ゆ、づるくんっ?」
そのままグイグイ私の手を引いて、前を歩くえっちゃんと楓馬くんに追いつかんばかりの勢いで歩き出した柚弦くんに、私はなす術もなくヨタヨタと引っ立てられる。
「林田さん――」
私たちの足音に会話を止めて振り返ったえっちゃんと楓馬くんに、柚弦くんが声をかけて。
2人の視線が私たちをとらえたと確認したと同時、柚弦くんが私の手をグイッと引っ張って、つんのめった私をその腕の中にギュッと抱きとめた。
「あっ、あのっ」
いきなり柚弦くんの体温に包まれてドギマギしながら小さく抗議の声を上げた私だったけれど、後頭部を柚弦くんの大きな手に押さえられて、くぐもった音が漏れるばかり。
最初のコメントを投稿しよう!