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「ごめん。僕の言い方が悪かったみたいで。僕が好きだって言った相手は、春――萌々ちゃんなんだ」
わざわざ「春川」と言おうとしたのを、「萌々ちゃん」に言い直して、柚弦くんが高らかにそう宣言して。
ひゃっ。
ちょっと待って、ちょっと待って柚弦くんっ。いきなりそんなのっ。私、なんの心の準備も出来てないのに!
ジタバタする私の両肩をグッと掴むと、柚弦くんが私の目をじっと見つめてきて言うの。
「そういうわけで……。ね、春川萌々さん。約束通り、僕と付き合ってください」
みんなの前で、そんなっ。
えっちゃんが固まったように私と柚弦くんを見ていて、楓馬くんがその横で「柚弦、やるじゃん!」と何故かノリノリで囃し立てる。
えっちゃんの、柚弦くんへの気持ちに片がつくまで待って欲しいと。柚弦くんの告白への返事を先延ばしにしたのは他でもない、私。
結局その猶予期間に甘えて何も策を講じなかった結果が今なわけで。
こんな風にみんなの前で再度告白されて、「ごめんなさい、私実は他に好きな人が」とか、言えるわけ……ないっ。
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