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「ゆ、づる、くん……」
ややしてポツン、と。えっちゃんが柚弦くんの名前を呼んで。
柚弦くんが私を腕の中に抱きしめたまま、首だけをえっちゃんの方へ向ける気配がした。
私はそんな2人を見上げて、何も言えなくて小さく息を呑む。
「あなたが好きなのって、本当に萌々ちゃん、なの?」
探るように落とされた言葉に、柚弦くんがしっかりとうなずいて。
「うん……そうなんだ。実は僕、高校の時からずっと萌々ちゃんしか見てなくて。……でも、ごめんね。最初からそうはっきり伝えるべきだった」
――他に女の子は一人しかいないから、あれだけでも十分伝わると思ってて……。
どこか申し訳なさそうに、けれども私の肩を抱く手にしっかりと力を込めて、柚弦くんがえっちゃんを見つめた。
「そ、だよ、ね。私、柚弦くんからちゃんと聞かされてた、もんね」
えっちゃんが、柚弦くんの言葉を受けて、まるで自分に言い聞かせるみたいにそう言って。
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