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まぁ、萌々は元々頭は悪くなかったからな。そこまで驚きゃしねぇけど。
思いながら、俺もカップを取り上げる。
「うちのお嫁さんになってくれないかしら」
「……っ! はぁ?! 誰が?!」
「だから、萌々ちゃんよ。……だめ?」
「だめ。無理」
口に含みかけたコーヒーを、噴き出しそうになりながらも即答する。
「あんなちんちくりん誰が……」
あれを俺の嫁に?
先刻久々に会ったばかりの萌々の姿を思い返しながら、俺は口端をひくりと引き攣らせる。
そんな俺を見て、母親は小さく肩を竦め、コーヒーをひと口飲んでから言った。
「あなただって小さい頃は小柄だったのに」
「……知ってるけど」
そんなのはこの家にあるアルバムを見れば一目瞭然だ。
確かに俺は小学校低学年までは大きい方ではなかった。……っていうか、小学校入るまではクラスで一番背が低いくらいだった。その頃は10人に聞けば10人間違うくらい、顔も女みたいだったし……。
おかげで、女の子も育ててみたかったという母親に、俺はよけいに可愛がられて――。
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