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「アリスの格好とか、すごく似合ってたのに」
「それは否定しないけど」
そう、俺はこの母親に、いつもではないにしろ、ちょくちょく女の子の服を着せられていたのだ。
「認めるのね」
「実際可愛かったからな」
だけどそれは、別に無理矢理とか、そんな一方的なものではなくて、むしろ俺も着させて貰えることが嬉しくて堪らなかった記憶がある。何だか、違う自分になれるような気がして。
「それが急にこんなに大きくなっちゃうんだもの……お母さんびっくりしたわ」
「嫌だったのかよ」
「いいえ、満足よ。いい男に育ってくれて嬉しいわ」
「……そりゃどうも」
ただまぁ、それが今日まで続くことになるとは……母さんも思ってなかっただろうけどな。俺自身も思ってなかったし。
……まぁ、今更ひらひらは着れないけど。
「今度見せてよ。買うわよ、ブロマイド」
「ブロマイドって」
再度噴き出しかけたのを何とか堪え、思わず母さんの顔を見る。
すると彼女はきわめて真面目な顔で言った。
「そうね。せっかくだから腕のいいカメラマンを雇いましょうか」
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