03.満員電車

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 だから私、出来ればドア付近で外を向いて立つようにしたいっていつも思っていて、実際にそれを心がけるようにしているの。  でも――。 *** 「ひゃっ!」  ドア付近はドア付近で、降りる人に鬼のように後ろから押されて、避けようっていう自分のタイミングなんてお構いなしに電車外に放り出されてしまうことがままあって。  今日も駅に着いて、掴まっていたポールから手を離して一旦車外に出て降りる人をかわそうと思ったら……それより先に後方からグイグイ押されてしまい――。最後にはドン!と突き飛ばされて、ホームに転落しそうになってしまった。  人波に押されて不用意に外へ放り出された身体に、転ぶのを覚悟してギュッと目をつぶったら、不意に背後から伸びてきた手に身体ごと腕をグイッと引っ張られて抱き止められた。 「――春川さん、大丈夫?」  気がつけばホーム上。期せずして相手の腕のなかにギュッと抱きかかえられるようになってしまっていて、私はソワソワと瞳を泳がせた。 「く、久遠寺(くおんじ)くん……!」  腕に抱きとめられたまま声の主を見上げたら、同じ大学に通う、同級生の久遠寺柚弦(ゆづる)くんだった。
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