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そのまま下車する人たちの流れが落ち着いたのを見計らっていたらしい久遠寺くんが、混み合った車内に戻ると「こっち」って私が立つ位置まで確保してくれて引っ張り上げてくれる。
彼は王子様タイプの優しそうなキラキラ男子。
ミディアムショートの暗茶の髪の毛が、真面目そうな好青年といった雰囲気。そうしてその見た目通り、物腰も仕草も柔らかくて、何よりとっても紳士的な男性です。
そんな彼は、私みたいなちんちくりんのことだって、まるでお姫様のように扱ってくれる。
そう。隆ちゃんとは大違い……。
心の中でふと先ほど出会ったばかりの兄的存在の幼なじみのことを思い浮かべる。
ぶつかりそうになった私に、隆ちゃんが言ったのは「ウリ坊」っていう屈辱的な言葉だった。
誰がウリ坊よ!
言われたときは隆ちゃんに出会えた嬉しさと、遅刻しそうっていう焦りで怒り損ねてしまったけれど、今更のように思い出してモヤモヤとしてきてしまう。
ウリ坊に見えてしまうような女の子のことなんて、きっと隆ちゃんは“小動物”くらいにしか思っていないはずだ。
それが、すごくすごく悔しい。
私にもっと身長があって、思わず触れてみたくなるぐらい大きくてふんわり柔らかな胸があったなら……。
あんな憎まれ口を叩かれずに、久遠寺くんみたいに「大丈夫?」とか聞いてくれていたのかしら。
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