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一応「気をつけていけよ」とは言ってくれたけど! それにしても、よ!
「春川さん? ――もしかしてどこか痛いところでも……」
いつの間にか眉間に皺を寄せてしまっていたみたいで、久遠寺くんに物凄く心配そうな顔をされてしまった。
「あっ、ち、違っ。私ウリ坊じゃないし、――」
それにどこも何ともなくてっ。
助けてもらったくせに他所事を考えてしまって、あまつさえ変なことまで口走ってしまった。
「……ウリ坊?」
久遠寺くんにキョトンとされて、ブワリと顔が熱を持つ。
恥ずかしさに慌てて口を押さえようたけれど、ギュッと周りから押しつぶされるみたいにすし詰め状態。久遠寺くんの腕の中も思いのほか狭くて、手なんて上げられそうにない。
顔を隠したいのに隠せないとか……満員電車って本当デンジャラス!
ついでに言うと、顔をうつむけたくてもそれすら許されないほどの乗車率。鉄道会社め! 乗客をもっと大事にしなさいよ!
半ば八つ当たりのようにそう思ったのと同時、電車が大きく傾いて、私はムギューッと押しつぶされそうになった。
こっ、これは心の中で電車の母体に悪態をついた報復ですかっ!?
「……ちょっとごめん」
と、そんな声と同時に抱きしめられたまま壁際に押しやられた私は、久遠寺くんが周りの乗客たちからガードするみたいに私の前に立ち塞がってくれたのに気がついた。
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