118人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
【side:久遠寺柚弦】
学校最寄りの駅で電車を降りると、改札までの通路を萌々ちゃ……春川さんと一緒に歩いた。
改札の外に出れば、人の流れも穏やかだ。昔からひときわ小柄な彼女だけど、そこからはもう一人で大丈夫だろう。
となれば、僕の役目もそこまでだ。
思うけれど、それはそれでやはり名残惜しい。
彼女とは高校からの付き合いだけど、それはあくまでもクラスメイトという関係で、こんなにも間近にその気配を感じられることはまれだったから。
本当は、いつだって彼女の隣にありたかった。それはもう、高校生――よりもずっと前からそうだ。
……その想いを、伝えられたことは一度もないけれど。
(……どうしようかな)
できるだけ彼女の歩幅に合わせて歩く。ちらりと視線を横向けると、つやつやとした黒い髪の毛に、綺麗なエンジェルリングが浮かんでいるのが見えた。
……可愛い。相変わらず可愛い。なんていうか、うっかりぎゅってしたくなる。
うちの家系は高身長で、姉たちも僕と同じかむしろ高いくらいだから、150あるかないかという春川さんの存在はとても新鮮だ。
そんな環境のせいか、僕は昔から小さくて可愛いものに惹かれる傾向があって……。
いや、だからってもちろん、それが全てではないけどね。
最初のコメントを投稿しよう!