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すぐ傍まで来て足を止めたこの男は、高校の時に通っていた塾で知り合った僕の友人だ。
偶然にも同じ大学、同じ学科で、成り行きとはいえ、現在は昼食なども一緒にとるような間柄になっている。
「え? あ、えっと……」
ちなみに楓馬も背が低い。いつだったか、「160はあるし!」と言い張っていたのを思い出す。
そのせいだろうか。楓馬は僕の陰になっていたはずの春川さんをすぐさま目に留めて、思わずといったふうに彼女を指さした。
(いや、ちょっと待て)
僕はその指先をすっと握って下ろさせる。指をさすな、指を……。
けれども、それを気にするふうもなく、春川さんはにこ、と笑って、
「あ、春川です」
と次には小さく頭を下げた。
(可愛い上に、優しい……)
こんなにも不躾な友人に、こんなにも誠実な態度をとってくれるなんて……。
僕は改めて春川さんを見直してしまう。
いや、知ってたけどね。知ってたけどこう、ある意味惚れ直したっていうか!
そんな僕を尻目に、楓馬は思い出したように表情を明るくし、
「そうだ、春川さん! 知ってる知ってる。ちっちゃい仲間のね!」
うんうんと一人勝手に頷いた。
(ちっちゃい仲間?)
僕は小さく瞬き、双方の顔をちらりと見遣る。
すると春川さんが、少しだけはにかむみたいに僅かに肩を竦めた。
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