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拗ねたように口を尖らせていても、艶々の唇が愛らしくて様になるとか……本当ズルい。
私がやったら、子供が駄々をこねているようにしか見えないのに。
「……だ、だって……恥ずかしかったんだもん」
――男の子たちの前でおっぱいの話なんて。
小声でささやくように付け加えたら、えっちゃんが「おっぱいって……」ってクスクス笑うの。
「バストとか胸とか他に言い様があるでしょうに。萌々ちゃんったら」
そう言われて、「確かに」って思っていたら、
「でも、あの場でおっぱいとか言わなかったのは褒めてあげる。萌々ちゃん、偉いぞ!」
って頭をぽんぽんと軽く撫でられて、ついで小さく「ありがとう」ってお礼を言われてしまった。
「え?」
何でお礼?
思わずキョトンとしてえっちゃんを見たら……「歩きながら話そう。立ち止まってたら結局久遠寺くんたちに追いつかれちゃう」って、今度はえっちゃんに手を引かれる。
脚の長さからして違うからだろうな。
えっちゃんはそんなに急いで歩いているようには見えないのに、私はちょこまかと小走りになって。
「あ、ごめんね、萌々ちゃん」
えっちゃんはすぐに気づいてくれて、速度を合わせてくれた。
そういえば……さっき駅から大学までの道のりも、そんなに歩くのしんどくなかったな。
神木くんが一緒だったのもあるだろうけど、えっちゃんより背の高い久遠寺くんは、きっとかなり気を遣って私たちに歩幅を合わせてくれていたんじゃないかと気が付いた。
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