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基本、祖父や親父からは勘当されたも同然の扱いを受けている俺だが、母親のことは気になるので先日のようにたまに顔を出すようにはしている。あえて自分の荷物を残したままにしているのも、その口実に使えるからでもあった。
とはいえ、運悪く父親や兄貴とばったりなんてことになったら、俺の現況についてや、いい加減家を手伝えだのという話を延々されるのはわかっているので、できればそう頻繁に帰りたくはない……。
だが、まぁ、仕方ない。
今日は午後から他の用事が入っているから、明日か、明後日か……できるだけ早いうちにもう一度帰ろう。
「は――…」
ほどよく空調の効いた部屋の中、俺は深い溜息をつきながら目を閉じる。
するとまだまだ抜けきらない酒のせいか、疲れのせいか、たちまち眠気が降りてくる。
水の底に身体ごと沈むように、一気に薄らいでいく意識。それに逆らうことなく、俺は厚手のバスローブを着たまま、夢の中へと落ちていった。
***
昼下がり――。
完全に酒の抜けた俺は、派手めの中型バイクにまたがり、とあるファミレスを目指していた。
二輪免許自体は大型でとっていたけれど、たまたま人から安く譲り受けたそれは青と黒を基調とした少しばかり古い中型。それが案外乗り心地も良くて、気に入っていたりする。
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