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トイレ帰りかな。
ひとりで歩いてくる神木くんを見つけた私は、廊下の片隅、ぽこんと出っ張っている柱の陰から神木くんの名を呼んでちょいちょいと手招きをした。
「あ、萌々ちゃん」
私を見つけるなりにっこり微笑む神木くんのその毒気のない雰囲気に、私は思わず怯みそうになってしまった。
私、彼のこと利用しようとしてるんだけどな。
いいのかな。
思ったけれど、えっちゃんのためだもん。悪役にだってなるわ。
「あのね、ちょっと相談があって」
言ったら、「ゆづには聞かれたくない話?」って即座に言われた。
わー、神木くん、のほほんとしてるかと思ったら、案外鋭いところもあるのね。
えっちゃんのこと、悦子ちゃんって呼んでしまったり、鈍いのかしら?って思えば、こういう鋭さもたまに見せてくるから、人って本当に油断ならないって思ったの。
「その……久遠寺くん絡みだから……できたら……その……」
ああ、なんでここでモジモジしちゃうの、私!
これじゃあまるで、私が久遠寺くんに気があるみたいじゃないっ。
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