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だからまずは確認……。春川さんの気持ちを探る。それくらいしておかないと、万が一勘違いだった場合、僕の方が立ち直れなくなるかもしれない。
……なんて思っていたけど、案外その必要はないかもしれない。
だって、春川さんは案内されたテーブル席に着くなり、僕にこう言ったのだ。
「彼女とかいないのかな」
一瞬耳を疑ったけれど、確かに春川さんはそう言ったのだ。
僕にいま、彼女がいるかどうか。春川さんはそれが知りたいらしい。
その質問で、僕の鼓動は一気に加速した。
思えば春川さんも元々僕に話があったと言っていた。誘って貰えて嬉しかった(良かった、だったかもしれないが)……とも。
そしてその、いたたまれないように頬を染め、もじもじと恥ずかしがるような特有の仕草――。
僕だって今まで伊達に何百人もの女の子に告白されてきたわけじゃない。
その視線の意味や、表情の見せ方、声音の語るところ……それだけで伝わってくるものがあることを知っている。
(……嘘、本当に?)
慌てて言葉を取り繕おうとして、それもなかなか上手くいかない春川さんは、小柄な身体をいっそう小さく縮こませるようにして僅かに俯いた。
そのまま束の間の沈黙が落ちる。
この後――これに続くのは、一つしかない。
「春川さん、僕――」
だけど、それならと僕は先に口を開いた。
なのに、そこにちょうど店員さんがやってくる。
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