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「ご、ごめんなさいっ、ついっ」
言って慌てて手を引っ込めようとしたら、伸ばしたままだった手首を、うつむいたままの久遠寺くんにギュッと握られてしまった。
「――春川さん。僕、本気だから」
言って、ゆっくり顔を上げた久遠寺くんが、とても真剣な、でもどこか柔らかな面差しを私に向けてくる。
立ち上がって前のめりになっている関係で、そんな久遠寺くんの顔がすぐ目の前にあって。
キラキラと澄んだ大きな瞳でそんなふうに見つめられたら、私、どうしていいか分からないよ。
スキとかキライとかとはまた別の次元で、整った顔の異性というのは心を掻き乱すんだって思い知らされた。
ぶわりと全身が熱を帯びたのが分かって。
絶対いま、私は真っ赤になってしまってるっ。
このままはマズイって心が警鐘を鳴らすのに。
手を捕らえられてしまったままの私は、引くに引けなくてただただそわそわしてしまう。
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