10.成り行きとはいえ

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【side:如月隆之介】  今日も今日とて酒が入っているので、移動は電車。最寄りの駅から実家まで欠伸をしながら歩き、何も考えず実家の扉を開けたら、玄関に兄貴の靴があって――。  げっ、と思った俺は、ワンピースのベルト(目的のもの)だけとって、そそくさを家を後にした。 (つか、何でいるんだよ……)  いつもなら仕事の日に違いないはずなのに。  兄貴の勤務先(うちの店)は年末年始を覗いて年中無休だが、兄貴の休みは定休だった。実際、今までだってその日を避けて帰省していれば、顔を合わせることはなかったのだ。  そのせいで、最近ではいちいち母親への確認もしなくなっていた。それが(あだ)となった。 「いつになったらうちで働く気になるんだ?」  早く家を出ようと、急くように靴を履いていたとき、背後から声がした。  俺は振り返らずに、「今んとこその気はねぇなぁ」とだけ答えた。 「相変わらず親不孝なヤツだな」  リビングの入り口に身体を凭れかけさせ、口端を僅かに引き上げているさまが目に浮かぶ。  俺は振り返らないまま、 「親孝行は兄貴に任せるよ」  とだけ残して、家を出た。
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