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何気なく視線を巡らせた先には、駅前のスーパー。その出入り口から、よろよろと出てきた小柄な女の姿を目に留め、俺は小さく瞬いた。
(萌々……?)
……つーか、どう見ても買いすぎじゃね? あいつ自分のキャパってもんを知らねぇの?
第一声でそうツッコミたくなるほどの荷物を抱えていた萌々は、早々にきつそうな顔をしながらも、そのまま家の方へと歩き出そうとしているところだった。
俺は自分の荷物に目を移し、それが背中に回したボディバッグと、片手に提げていた小さな紙袋だけなのを確認すると、溜息をつきながら彼女の元へと足を向けた。
「なんだ、今夜は肉じゃがか?」
肉じゃがなんて久しく食ってねぇな。
思いながら声をかけると、萌々が弾かれたように背筋を伸ばした。
そのどこか挙動不審な様子に、俺はふと先日行ったレストランでのことを思い出す。
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