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なのにそれを突っ込む間もなく、萌々はまるで捨て台詞のようにそう言って、漫画みたいに走り去った。そんな後ろ姿を半ば呆然と見送ってから、
「……あいつ結構力あんのな」
俺は遅れて呟くと、足元に転がっていた菓子パンの袋をおもむろに拾い上げた。
いちご風味とかかれた、ピンクのメロンパン。バーコード部分には半額シールがしっかりと貼られている。
……なんか萌々の顔に似てる気がする。
思えばメロンパンの上に萌々の顔が重なって見え、俺は一人小さく肩を揺らした。
「つか……協定ってなんだ、協定って」
それからまた呆れたように独りごちてみたものの、当然そこに返る声はない。
「またアホなこと考えてんじゃねぇだろうな、あいつ……」
苦笑混じりに溜息をつくと、俺はメロンパンを提げていた紙袋に放り込み、そのまま駅へと踵を返した。
実家のことなんて今更のことなのに、少しだけ滅入っていた気持ちがいつのまにか消えていた。
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