11.ズルくて意気地なしの私

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【Side:春川萌々】 「えっちゃん。その……久遠寺(くおんじ)くんのことなんだけど……」  大学が終わってから、私はえっちゃんとふたり、ファミレス〝アリア〟にいた。  あの日と同じ、どこかあどけない印象の小柄なウェイターさんに通されたのは、()しくも先日久遠寺くんと来た時に座ったのと同じテーブル席。  でも今日はえっちゃんが壁に背を向けた側に、私が久遠寺くんがいた側に座っている。  この席に通された時、あの日と一緒を避けたくて、私が意図的にそうしたの。  夕飯までは間があるし、かと言って3時のおやつの時間はとっくに過ぎていて。  えっちゃんはモデルさんで、カロリーなどには気を遣っている。  結果、とりあえず、とメニューの中から選んで頼んだのは、えっちゃんがブレンドコーヒー。  私はミルクティー……にしようとして、寸前でクリームソーダに変更したの。  やはり何となく……。  あの日と同じものを頼むのは気が引けてしまって。  席と、応対してくださった店員さんが一緒でも、違う点をいくつか設けたら、前みたいにをせずに済むかなって……。  何ら根拠のない思い。
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