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「僕……実は猫舌なんだ」
ほんわりした甘みに包まれた紅茶に数回くちをつけたところで、久遠寺くんが自身もカップを傾けながらそう微笑んで。
私はカップをソーサーに戻すと、覚悟を決めて久遠寺くんを見つめた。
「あのね。……実は私、えっちゃんから……久遠寺くんと仲良くなるための橋渡しを頼まれてて……」
さっき久遠寺くんに誘われた時、その話を切り出すチャンスだと思ってしまったの、とぽつん……とつぶやいた。
「なのに……私が久遠寺くんとこんな……。そんなの……えっちゃんを裏切ることになっちゃう。許されるわけ……ないよ」
泣きそうになりながらしどろもどろに言ってうつむいたら、久遠寺くんが小さく吐息をついたのが分かった。
「えっと……ごめん。さっき言いかけたこと、言っちゃうね」
久遠寺くんの柔らかな声に、私はゆっくりと顔を上げる。
「僕、林田さんと友達になるよ。友達になって、彼女のこと……僕なりに見極めてみる。その上で、ちゃんと話をするよ。だからそれまでは――僕たちも今まで通り、ってことで……どうかな?」
私は久遠寺くんの言葉に瞳を見開いた。
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