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“冷蔵庫の中にお昼ご飯、入れてあります。チンして食べてね。”
三交替勤務の父親は今日は夕勤で、要するに今はまだベッドの中。
キッチンの連絡ボードにそう走り書きをして、ボーダーTシャツと膝上丈のタイトスカートの組合せの上に、白いスプリングコートを羽織る。
玄関先に置いていたお弁当入りのリュックを背負って玄関扉に手を掛けた。
「行ってきます」
返事は返らないって分かっていても、毎朝の習慣は抜けないもので。
しんと静まり返った家の中に向かって小さくお出かけの挨拶をすると、私は外へ踏み出した。
***
春。
待望の大学生活は始まったばかり。まだ慣れないことだらけだけど、それでも友達も出来て少しずつ新生活にも慣れてきた。
その気の緩みがまずかったのかな。
「ヤバイっ。電車乗り遅れちゃう!」
今朝は少し出るのが遅くなってしまった。
いつもならのんびりテクテク歩く道のりを、小走りに急いでいたら、曲がり角で出会い頭、長身の男の人とぶつかりそうになってしまった。
「ひゃっ!」
変な声を出して急ブレーキをかけた私に、
「……ったく、朝から元気なうり坊だな」
190センチはあろうかという長身銀髪の男性から、意地悪な声が掛かる。
「りゅ、隆ちゃん……!」
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