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だって、春川さんを萌々ちゃんと呼ぶのは自分的にまだ早いと思っているし、何より春川さんをそう呼ぶとなると、必然と林田さんのこともあだ名で呼ばなくてはならなくなる気がするからだ。
それを嫌なの? って言われたら、別に嫌なわけではないんだけど……。
何て言うか、もともと女の子は一律苗字で呼ぶ方がいいかなって思っているところもあるしね。……その方が、余計なトラブルも少ないから。
「ねぇ、ごめんみんな。ちょっといいかな」
17時を過ぎた頃、思い出したように口を開いたのは林田さんだった。
残りの三人が、そろって手元から顔を上げる。林田さんの位置は、僕からすれば斜め前。
自然と彼女に視線が集まると、彼女は待っていたみたいに笑顔で言った。
「私から、一つ、提案があるの」
***
試験期間が終わると、まもなく夏休みに入った。
その週の、金曜日。
「あ……楓馬も遅れるって」
18時に待ち合わせていた店に入ると、そこにいたのは林田さんだけだった。
僕はたったいま届いたばかりの楓馬からのメッセージを確認し、独りごちるように言った。
「萌々も19時くらいになりそうって……」
「みたいだね」
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