118人が本棚に入れています
本棚に追加
何故かそこで、母親に言われたのだ。
萌々ちゃんを招待したいって。
いや、意味が分からない。マジでわけが分からない。
まさかあの人、本当にあの萌々を俺の嫁にするつもりなんだろうか。
そのための顔見せか? 付き合ってもいないのに?
付き合うどころか、あれと俺は単なる幼なじみだぞ?
こう言ってはなんだけど、ある意味住んでる世界だって……。
と、俺が微妙にごねていたら、
「萌々ちゃんのお父さま、正臣さんの恩人なのよ」
正臣とは、母さんの旦那――要は俺の父親の名前だ。
「一度道ばたで倒れて、救急車で運ばれたことがあったでしょう? あの時、すぐに気付いて適切な処置をしてくれたのが萌々ちゃんのお父さまだったの。覚えてない?」
「……覚えてない」
「そう……もうあなたも2歳にはなっていたと思うんだけど」
2歳の時のことなんて覚えてるわけねぇだろうが……。
ダイニングテーブルの向かい側に座っていた母親が、いつにもましてのんびりとした調子で言いながら、ゆるりと首を傾げた。
今夜は父親も兄貴も帰りが遅くなるらしい。
最初のコメントを投稿しよう!